力学古典力学物理学

球極座標系でも運動方程式を解きたいけど……

力学

初めに

この記事は4部構成のシリーズ「極座標系でも運動方程式を解きたい」の第4部になっています。このシリーズでは周期的な平面運動について紹介していきます。第3部では球座標系での運動方程式を求めよう……と思うのだが、あまり利点が無いよなぁ。

式番号は引き継ぎ。

球座標系はちょっと……

球座標系でも今までのように加速度を導出して運動方程式を立てればできるのだが、導出に繁雑な計算を避けては通れない。そこでどうしても球座標系で議論したい場合にはラグランジュ方程式

$$\frac{d}{dt}\left(\frac{∂L_{(r,θ,φ)}}{∂\dot{q_i}}\right)=\frac{∂L_{(r,θ,φ)}}{∂q_i} (q_i=\left\{r,θ,φ\right\}) \tag{28}$$

ただし

$$L_{(r,θ,φ)}=K_{(r,θ,φ)}-U_{(r,θ,φ)}=\frac{1}{2} m|\boldsymbol{v_{(r,θ,φ)}}|^2-U_{(r,θ,φ)} \tag{29}$$

とする。

から導出するのが一般的である。(27)式はニュートンの運動方程式

$$m\left(\frac{d^2\boldsymbol{r}_{(q_1,q_2,\cdots,q_n)}}{dt^2}\right)=\boldsymbol{F} (q_i=\left\{r,θ,φ\right\})$$

と等価である。ちょくちょく出てくる $q_i$ は一般化座標と呼ばれるもので、簡単に言えば座標系によらずに位置を定義できるというものである。デカルト座標系でもラグランジュ方程式は成り立つし、他の極座標系でも成り立つというわけだ。

まあ流石に(29)式を決定させるために $\boldsymbol{v_{(r,θ,φ)}}$ は求めなければならないが、球座標系の基底 $[\boldsymbol{e}_r{_{(θ,φ)}},\boldsymbol{e}_θ{_{(θ,φ)}},\boldsymbol{e}_φ{_{(φ)}}]$ を用いて書き表せば大分楽である。球座標系における位置ベクトル $\boldsymbol{r}$ は

$$\boldsymbol{r}=r\boldsymbol{e}_{r{{(θ,φ)}}}$$

と表されるから、これを $t$ で微分して

$$\begin{align*}
\dot{\boldsymbol{r}}=\frac{d}{dt} (r\boldsymbol{e}_{r_{(θ,φ)}})&=\dot{r}\boldsymbol{e}_{r_{(θ,φ)}}+r\dot{\boldsymbol{e}}_{r_{(θ,φ)}}\\
&=\dot{r}\boldsymbol{e}_{r_{(θ,φ)}}+r\left(\frac{dθ}{dt}\frac{∂\boldsymbol{e}_{r_{(θ,φ)}}}{∂θ}+\frac{dφ}{dt}\frac{∂\boldsymbol{e}_{r_{(φ)}}}{∂φ}\right)\\
&=\dot{r}\boldsymbol{e}_{r_{(θ,φ)}}+r\dot{θ}\boldsymbol{e}_{θ_{(θ,φ)}}+r\dot{φ}\sinθ\boldsymbol{e}_{φ_{(φ)}}
\end{align*} \tag{30}$$

となる。よって(30)式から(29)式の $|\boldsymbol{v_{(r,θ,φ)}}|^2$ を決定することができ、これをラグランジュ方程式(28)式に代入すると

$$\frac{d}{dt}\left(\frac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂\dot{q_i}}\right)=\frac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂q_i} (q_i=\left\{r,θ,φ\right\}) \tag{28}$$

$$∴ \begin{cases}
\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂\dot{r}}\right)=\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂r}\\
\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂\dot{θ}}\right)=\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂θ}\\
\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂\dot{φ}}\right)=\dfrac{\dot{r}^2+(r\dot{θ})^2+(r\dot{φ}\sinθ)^2}{∂φ}
\end{cases} \tag{31}$$

となる。これを計算すれば運動方程式が導かれる。後は各自がやってほしい。

球座標系での運動方程式について散々に書き込んだが、この恩恵をあずかれるのは物体が球面を動く場合くらいだと感じる。私達の生活の中で身近なのは気象力学だろうか。地球では地球中心の向きに重力が働き、地表では偏西風などの風が吹くことからデカルト座標系での議論よりも分かりやすいのかもしれない。そこの辺りはその道のプロにでも訊いてほしい。

最後に

これで4回に渡った極座標系における運動方程式は取り敢えず終了である。主に円座標系での質点の運動を取り上げたが、剛体でも球っぽい形であれば球座標系は使われる。運動方程式をただ解くだけでは球座標系の恩恵はよく分からないが、その対称性から球っぽい形で体積分をするときには有用である。

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